そうすると大抵の女は泣くか、怒るかどちらかの反応を示して俺の前から去っていく。




この女はどっちだろうな……?






目の前にいる女を見続けていると、悲しそうに眉を下げて走り去って行った。




………泣くタイプの女か。












「………なあ…涼」






「…んだよ」











猛の真剣な声に、自分の体が身構えるのが分かる。










「お前…彼女のことは……」






「またその話か…」









俺は大きなため息をついた。




俺が階段で足を滑らせて病院に運ばれたあの日から、猛が口を開くと必ず話すのはこの事ばかり。





「彼女のことは思い出したか?」



「彼女のことはどうするんだ?」



「佐々野を見て何も思わないのか?」






最初は、意味の分からないことばかりを口にする猛に「うるせえ」と怒っていたけれど、毎日言われ続けると怒ることも嫌になる。