Luck TesT

少しして、難波がストレッチャーを押して戻ってきた。

「難波さん…?」

少しだけ、まだ、何かを迷っているような表情を浮かべていた難波だが、小さく頷くと、そのままストレッチャーを葵の寝ているベッドの横に付けた。

「…今のうちに、ここを出よう。彼女、起きないんだったら、これに乗せて、とりあえず外まで行こう。」

難波はそういって、葵を移そうとする。
俺もあわてて、それを手伝った。

「…布施さん、本当に……」

なんともいえない気持ちになった。
あれだけ犯人逮捕といって、俺たちを護ってくれていたのに、それがどうして?

どうしてもその事実を受け入れることができない。

「わからない。でも、布施さんに聞いて、違うって言われても、本当なのか嘘なのか、判断、できないだろう?」

難波に言われて、俺は俯くしかなかった。


…確かに、本当は命を狙っていたとして、俺たちを殺そうとしていますか?って聞いたところで、はい、そうです、なんていうわけがない。


「なら、とりあえず、まずは明日の9時まで、何とか生き延びるべきだ」

その言葉に、俺は頷いた。


葵…お前は俺が、護ってやる。