店で一番高いジーンズが売れて店長は上機嫌になっている。

「相変わらず気が強いわね、あゆ美！」

（え？！私の名前をどうして知ってるの？）

その客は黒いサングラスをゆっくりと外してニヤリと笑ってみせた。

「ち、ちあき？！」

「久しぶり、あゆ美。」

「もう、おどかさないでよ。
クビになるかと思って焦ったわよ。」

「ごめん、ごめん。
すぐに言おうと思ったんだけど、ちょっとからかってみたかっただけ。」

ちあきは、あゆ美の大学時代からの親友。

卒業してからあゆ美は大阪でちあきは東京に残って別々に就職した。

「ねえ、ちょっと時間ない？」

「え？ああ、今はまだ仕事中だし……」

そう言ってあゆ美は店長の顔をチラっと見る。

「あゆ美ちゃん、いいよ。
久しぶりに会った友達とお茶でもしておいで。」

（今日はやけに気前がいい。
そりゃそうだ。
１０万円もするジーンズが売れたんだもの…）

「じゃ、一時間ほど行ってきまーす。」

あゆ美は店長の気が変わらないうちにちあきを連れてさっさと店を出ていった。