武がフラフラと去って行こうとするのを、華音が止めた。

「どこに行くの?」

鋭い目で華音が武を見る。

「・・・・・・・」

何も言わない。武の考えなど華音には手に取るように分かる。

「死んで詫びれば、あなたの気は済むでしょうね」

けれどそれでは・・・

「カスミが目を覚ました時、あなたがいなかったらカスミは自分を責める・・・・」

カスミは優しい。武がカスミを追って死んだと知れば、自分を責め、今度こそ・・・

「カスミの為を思うなら・・・できる事を考えなさい」

武にしかできない事があるのだ。

華音やさくらは分かっていた。自分たちではカスミを連れ戻せない事を・・・。

「カスミを・・・・助けて・・・」

もう武にしか・・・カスミをこの世に繋げられる人はいない・・・そんな気がした。





カスミは武を悲しそうに見ている。

(タケちゃんのせいじゃない・・・私が弱かったから・・・もっと強ければ・・・)

その時白かった世界が暗くなった。遠くの方に一つだけ扉が見える。

「・・・・・行かなきゃ・・・」

カスミの呟きは誰にも届かない。