その時だった。俺の目の前を竜ヶ崎が横切っていった。 「あっ」 思わず声が出たが、竜ヶ崎は何の反応もなく通り過ぎていった。 どこに行くんだろう。指定ではない鞄を持ち、制服ではないパーカーを着て、彼女は颯爽と歩いて行った。 理事長室に向かう感じではなかった。教室に行くのか? なんとなく気になった俺は、竜ヶ崎のあとを追いかけた。 足音には気をつけて、ゆっくりと距離を保ちつつ進む。