「逃がさねぇ〜よ。子猫ちゃん」
瞬間、頭にカッと血が昇る。
そして全身にブワッと鳥肌が広がった。
(子猫じゃないし!子猫じゃないし!!)
あんたになんか捕まりたくない!
(離してよ!バカ神父っ)
「離せよ!バカ神父っ」
あたしは何も言ってないわよ。思っただけ。
怒鳴り声は紗依くんのものだった。
「誰が手伝ってくれって言ったんだよ?子猫って何だよ!?キモいんだよ!引っ込んでろよ。バカキモ神父!」
捕まれたあたしの腕を素早く引っ張り神父から引き離すと、ご丁寧に神父に蹴りまで入れて追いやる。
紗依くんが神父から引き離してくれた事と、言いたい事を言ってくれたおかげで鳥肌はなんとかおさまった。
「ひでぇ…っ!兄ちゃんを蹴るなよ」
「帰れ…っ!」
(え?……兄ちゃ……?)
神父はうらめしげな表情でこちらを見ていたけれど、紗依くんの剣幕にようやく姿を消した。


