紗依くんの低い声にあたしの足がビクッと反応した。
「…………」
(それは逃げるでしょう!)
心では叫びながらも現実では無言のにらみ合い。
「俺から逃げるの?紅愛」
低く響くけれど抑えた声。
あなたに怒る権利あるの!?
「逃げるんなら逃げたらいい……でも俺は、追いかけて君見つけだすから……必ず!確実に!」
紗依くんの恐ろしい瞳……。けれど何故かその中に悲しそうな色も浮かんでいる。
ずっと逃げ続けてやろうかしら……?
案外それもいいのかもしれない。
紗依くんがずっとずっとあたしを追いかけ続けるなんて。
でも、その目的は……?
……あたしを消すため。


