「好きなひとがいるんです…」 そう言って思わず彼のスーツの襟にしがみつくように掴まった。 そのときのアタシは 一体何を考えていたんだろう。 何を望んでいたんだろう。 彼の体温が伝わるほどに近い距離。 顔をあげることができない。 どうしよう。 好きなひとがいるって言ってこんなことしたら…! 一番恐れていたこと、 一番避けていたこと、 なのに…。 そう思いながらもアタシはもしかしたら彼の腕がアタシの背中にまわるかもしれない、 そんな淡い期待を抱いた。