「翻訳だよ」

「え、映画とかの?」

「いいや、主に書物をな。しばらくは元のマンションと行き来する事になるが、今の仕事が片付けば辞めるつもりではある」

「そうなんだ。あ、そうだ。ひと部屋空いてるから、そこをデイの部屋にしていいよ」

「すまんな」

 それから勇介は出勤まで時間があるのでノートパソコンをいじっているデイトリアを眺めながら紅茶を傾ける。

 翻訳の仕事なのだろうか時折、思案するように動きを止めて数秒ほどしてキーを打つ動作を繰り返していた。

 翻訳を仕事にしているという事は、数カ国の言葉を理解しているという事なんだろうな。

 それだけでも凄いと思うのに、それを仕事にしているなんてと感心する。