「なんで、避けてるの?俺、おまえになんかした?」


目を合わさないまま、壱子の口が開く


「迷惑。毎日毎日、赤沼くんの顔を見ると、嫌いな勉強のことしか思い浮かばない。イライラするの」


冷たく冷えきった言葉が、次々と壱子の口から吐き出される

そして 


「すごく迷惑。だから、もう私に関わらないで」


何か言えれば良かった

でも今の俺には、そんな元気も勇気もなかった

そのうちに、壱子は俺の目の前から去って行った


壱子に拒絶をされた事実が、俺の心臓を止める勢いで突き刺さる

なんで、こんなに胸が痛いのか 

拒絶されて初めて気がつく自分の中での壱子の存在の大きさ


俺は、壱子が好きなんだ


「気づくの遅いよ…俺」


壱子が居なくなった空間で、俺は独り言を漏らした