俺は女を担ぐと、屯所に向けて歩き出した。



総司は俺の判断に呆れたのか、溜息を吐きながら、女の物である刀と鬼の面を拾い、俺の後について来た。



「綺麗な夜桜ですね…」



桜を見上げながら、総司が呟く。



総司に誘われるように、俺も桜を見上げた。



そこには月明かりを浴びて、自分の存在を示すかのように美しく咲き誇る桜があった。



「そうだな…」



昨日まではあまり咲いていなかった桜が、今日は見惚れてしまうほど美しく咲いている。



まるで、桜がこいつと…、花散り鬼と俺達が出逢うことを望んでいたと言っているようだった…。