――なのに。
その鍵を殺してしまった。
あんなに容易く。
吐ききれないほどの伝えていない想いがあったのに、激情に身を任せて殺してしまった。
もっとやり方があったはずだった。長い時間一緒にいて、間違いに気づかさせることもできただろうに。
「……」
指先はまだ震えている。ぎゅっと握りしめても、しばらく歩けば力が抜けた。
容赦ない水の洗礼に苦ともせず、真夜中の亡霊さながら、カルツは進む。
ついた先は彼女の部屋。古いアパートで、彼女には相応しくないとカルツは思うが、住み慣れたと言い離れない彼女がいる――ただいまと言いたくなる部屋だった。
合鍵――勝手に作ったものだが、特に何も言われなかったので使っているカルツの宝物が一つで、扉を開けた。


