拳を握り殴ろうとしたが、なぜか力が出ずに、彼の胸元に置かれた。
続けざまに体の力が抜けて、彼に寄りかかる。
ミナナの耳が、濡れた彼の胸元につく。
生きている証の心音が聞こえ、ひどく落ち着いた。
曖昧でしかない血の匂いが、よく鼻を通る。不快だった、だけど離れない。
――生きてる。
そうやって、目をつむり、呼吸を、心音を、彼を、ミナナはじっくりと実感していた。
「ミナナが……そんな顔をするから」
それが呼ばなかった理由だと、あやすように彼はミナナの頭を撫でた。
血でもついていたか、水と一緒にミナナの顔を伝う。
目にあたり、そのまま流れた。涙のようだが、本当に泣いているかはミナナにしか分からない。


