「このままだと危ないね」
息は荒くも、いつものそれと変わらない口調で彼はどうでも良さげに言った。
「死にたいんですか」
「別にそうじゃないけど、死ぬことはあまり怖くないから。ミナナもすぐに“追いかけてくる”と分かっているし」
傘は彼にかざしているため、ミナナの頭が濡れていく。つむじから額まで、小さな道のように水が流れていた。
「こんなところで野垂れ死ぬ前に、なんで助けを呼ばないんですか」
「害悪に助けを求めたくないから」
「だったら……、私に連絡してくださいよ」
傘が落ちた。
どこにでもあるビニール傘。どうなろうといいとミナナは手から捨て、膝をついた。
「なんで、呼んでくれないんですか……」


