【理屈は要らないからいてほしい】
ひどい雨だった。
耳障りもなかなかに、降りだした空は止むことを知らず、アスファルトに潤いを与えていた。
雨を待ち望んだ雑草も、この勢いでは折れるかしなるか。
幸いなのは風がなかったことか。横なぶりではない、真下に落ちる雨は、視界に入る限り、細い糸にも見えた。
傘をさせば、それほど甚大な被害はないだろう。
だというのに、彼は傘をさしてなかった。
長い時間そこにいたのか、頭から爪先まで、見ていて寒さを感じるほどにずぶ濡れだった。
深海からあがってきたかのように重く、息が荒い。
帰ればいいのに、そのまま長時間外にいたのは、動けなかったからだった。
右足を折られたらしい。外傷なんかないのに、伸ばされた右足の指先が“足首”についている。


