「カルツさん、手話分かりますか」
今までの手の動きは女の“会話”だ。それを解読できないミナナは彼に頼る。
「さあ」
「よく一日持ちましたね」
「ほとんど喋らないし、あったとしてもイエスとノーで済ませられたから」
「それじゃあ、名前とか聞いてないんですか」
「そういえばそうだね」
通りで、アレやら害悪やらとしか言わないはずだ。
しかしミナナにとっても数日間の同居人なら別に情を持つ気にもなれず、名前はいらないとも思うが、会話できないのは不都合にも思えた。
どうしたものかと思いつつあったが、すぐにいいアイディアが出た。
「文字、書けるよね」
筆記である。
メモ帳とペン。
それを渡せば、女はこくこくと頷き、早速何かを書き始めた。


