【疑うは風の吹き回し】
その日、彼はなぜか鍋を持参していた。
「ミナナのために作ったんだ」
そう言って、鍋の蓋を開けた彼。
中身は白。
なめらかな匂いが唾液をそそるクリームシチューだった。
「珍しいですね。どんな風の吹き回しですか」
――作るなら、私の料理食べたいと言うのに。
自分で作るよりも彼はミナナの料理を愛しているはずだった。
わざわざこんな手間をかけるのには少々ミナナはいぶかしむ。
「気まぐれだよ。街を歩いていたらスーパーがあって、なんとなくふらふらと。気づいたら材料を買って、作った」
「あなたは時折、突飛な行動を起こしますよね……」
時折どころか、ミナナのためにとそれこそサプライズをしかける。


