有栖川本家を出て、従者を急がせ着いた城に、那智は言葉を失った。



あちこちで・・・・火の手が上がっている。



(・・・・なに・・・これ・・・・・)




女官の叫び声が各方面から…聞こえてくる。




那智が立ち止まっていると、一人の兵士に声をかけられる。




「そこの女。ここはもう危ない。早く逃げろ」




那智の顔を知らない兵士は、那智を気遣い声をかけてくれるが・・・・その言葉が頭に入ってこない。




「な・・・何が・・あったんですか?」





有栖川を出る時、父が最後にまだ間に合うかもしれないと教えてくれた。




しかし・・・・この状況は・・・間に合ったとは思えない。




兵士は那智の言葉を怪しむ事もなく、教えてくれる。



里帰りしていた女官が帰ってきたら、こうなったとでも思ったのだろう。