哀れな獲物……オルトロスは、ちょうど、崖から這い上がってきたところだ。 あたしは、わざと魔犬の正面に立って挑発した。 魔犬は唸りを上げ、本能に任せて突進してくる。 いいコだ、そのままおいで。 あたしは唇をなめた。 魔犬が双頭の牙をむき出して飛びかかってくる。 あたしは無慈悲に剣を叩きつけた。 瞬殺。 それがせめてもの慈悲よ。 真っ赤な返り血が、あたしの仮面に点々と撥ねた。 魔犬は血と煙を噴き出して吹き飛ぶ。 そのまま谷底へ、今度こそ転落する。