あたしは、外の話し声が完全に聞こえなくなるまでじっとしていた。

 それから百を数えて、あたしは動き出す。

 大きめの衣装箱から『鎧』を取り出した。

 女用の騎士の鎧。

 色は黒――闇のような漆黒。

 あたしは、黒い鎧を身に付けて、颯爽と姿見の鏡の前に立った。

 仮面をつけた漆黒の女騎士。

 謎に包まれた美しき勇者。

 魔王の支配を覆すため、人々を助け、魔物を挫く。

 いつしか人々は彼女をこう呼んだ。

 『黒騎姫』(くろきひめ)――と。



 きゃ~、カッコイイ~!!

 鏡に映った自分にホレちゃうわ~。