あたしは、衣装箱から『仮面』を取り出した。 端正な女性の顔の仮面。 口元以外を覆い隠す仮面。 それは、分身を作りだせる魔法の仮面。 本体と全く同じ力を持つ分身を作れるから、アリバイ工作にはもってこい。 きっと、どこぞの貴婦人が何かの理由――浮気でもするため――に使ったのだろう。 あたしは仮面を着けた。 目の前にあたしの分身が出現する。 鏡を見ているような不思議な気分。 「フラン様」 突然、部屋の外から声をかけられた。 シモンだ。 あたしと分身のあたしは目を合わせた。