なにも考えずに
傷に優しく触れる…


「この時代に平助君がいなかったらこの痕が出来なかったのに…」


口から零れ落ちた言葉に自分でも驚いた。

違う。
平助君がこの時代にいなかったら
私はきっと、きっと
恋をする楽しみとか知らなかったはずだ。


それに平助君がいるから
きっと私はこの時代に来たんだ。



「…葵?」


ゆっくりと平助君がまぶたを開ける。