【掌編】さようならを教えて

わたしは、電車の窓を流れる景色をみながら、誰もいない家に帰る。


あのひとの帰る家には、わたしの知らない人が、あのひとの帰りを待っているだろう。

玄関をあけると、声がするだろう。

わたしがかけたかった言葉を、わたしじゃないひとが、あなたにかけるだろう。


「おかえりなさい」




「ただいま」


わたしの家に、返す人のない自分の声が、ぽつり、ともる。