お店は歌舞伎町の雑居ビルの2階にあった。

店内は余り広くはないが、グランドピアノがあり、高級そうな絵画が飾られていた。



紀子はマネージャーと呼ばれる人を紹介された。

30代で本職はボクサーをしている人だった。

なんでもわからない事があれば、彼に聞くようにと言われた。


お店の奥の控え室は狭く、ロッカーが所狭しと並んでいて、奥で二人着替えるのがやっとといった感じだった。


ママが、好きな方を選びなさいと言って、ドレスを2着持ってきてくれた。

どちらも、とてもゴージャスだった。


紀子は、鮮やかなオレンジ色のロングドレスを着た。

化粧が薄く、映えなかったので、少し濃く化粧を塗り直した。

さっきママから貰った口紅をさしてみた。

顔がパッと明るくなった気がした。



我ながら、まあまあの出来になった。


ママに見せに行くと、

「あら、いいじゃない」

と、言ってくれた。


《人に容姿を褒められるのは何年振りだろう…》

照れもあったが、すごく嬉しかった。


「名前、どうしようか?」

とママに聞かれて

「あや」にした。

前に働いていた時も姉から一字とったこの名前にしていた。