お嬢様は家出少女


―拓也side―



「あれ、拓也。もう帰ってたんだ」

「ああ」


その夜。


夕食をすませた俺は、早足で部屋に戻ってベッドに寝転がった。


「合宿は明後日までか。明日が最後の夜だな」

「ああ」


こいつは同室の中井月斗。

容姿端麗、スポーツ万能、成績中の下のやつ。

なんとか赤点はとっていないようだが、それもギリギリってところ。


まあそれでも、外見が良くてスポーツ万能とくればほとんどの女にモテるわけ。


しかも、こいつはほとんどの女に優しい。

それも、ほとんどの女を寄せつける。


確かに、こいつに優しくされて、あの顔で優しくほほえまれたら、ほとんどの女はたまらないんだろうな。


…俺が「ほとんど」を強調するのは、そうでない女もいるってことを強調したいからだ。

気にしないでくれ。


「お前さあ、どうしたんだ?」


いきなり、月斗がこんなことを言った。


はあ?

なんだよ、いきなり。


「お前のパートナー。ああ、岸山か。あいつに対する態度。お前の女に対する態度とは思えねー」


ああ、そういうこと。


「俺に接するのと同じようにさあ、接してるじゃん。お前、とことん女には無愛想だからさ。…あ、もしかして、岸山は特別なのか? 例えば…好き…とか」


…。

好き…か…。