君を感じて生きる世界

 

    ◇


志望校が目の前に迫ってくると、見たことのある制服ない制服を身にまとった生徒たちが目立っていた。

生徒の数が増えるにつれ学校に近づき、前へ進む度に心臓の動きが早くなっている。

学校は大きな柵で囲まれていて、柵の内側にはたくさんの桜の木が目立つ。まだ満開までとは行かないが桜は咲いていて、快晴の空と重なりとてもきれいだ。

「桜満開だったらもっときれいだよね。ここ」

彩も空と桜を見上げて同じことを考えていた。満開だったら本当にすごいだろう。

「だよなーホントにきれいなんだろうなー」

「受かってたら来年みれるね!」

「受かっていればな」

「大丈夫だって、私が教えたんだから」

「そうだ。今日さ二人とも受かってたら、どっかよって遊んでいかね?勉強で世話になったから奢るぜ?」

彩をそう誘ってみたら、食いつくようにこちらを見上げ、驚いた顔をしていた。

そして何を思ったのか少し顔を赤くして俯いてしまう。

今日だけで何回顔赤くすんだよ。ある意味すげー。

「いいの?奢ってもらっても」

身長差もあり、必然的に上目遣いで僕を見上げ、尋ねる。

「あぁ。俺の金が保つまではな」

そんな愛らしい目で見られたら断れるはずがない。断れるとしたらどこかの勇者か魔王だけなんじゃないかと思ってしまう。

今、懐には福沢さんが5人いる(一万円札が五枚ある)コツコツ貯めておいたからだ。

「じゃぁ受かってたら奢ってもらうね」

とマックの店員さんにも負けないくらいの笑顔を見せる。営業スマイルではないけど。

「おう」

やはり彩の機嫌は良いらしい。いつもはもっと落ち着いていて、少し冷たいイメージも少なからずあったが、今はとても明るく楽しそうにしている。

ホントに受かってる自信があるらしい。緊張はしっかりしてるけどね。


そんな会話を交えながら桜の下を歩いていくと校門にたどり着いた。

校門をくぐると校舎がすぐ先にあり、その校舎の昇降口前に掲示板がある。

そこには結果を見に集った受験生がうごめいていて、これは簡単には掲示板が見えなそうだ。

「彩、おまえ受験番号は?」

「110番」

「イトウか!校長さんの名字じゃん」