自分の手足をみてから結構大きな声で言い放ち、僕に右足でローキック(スネ狙い)をしてくる。さすがにこれは喰らうと痛い。弁慶だって泣いたって言う部分だし。
だから僕は狙われていた左足を後ろへ引き、そのまま少し距離をとろうとした。
しかし、彩は美術部だったとは思えない反応を見せ、右足の着地後そのまま体をねじり、左足の後ろ蹴りで追撃してきたのだ。
スカートがふわっと舞い上がるのも気にせず。
「てい」
と彩は短い言葉を放ち僕の腹めがけて命一杯足を伸ばした。
反応に遅れた(ついスカートに目が奪われ)僕は、避けられずクリティカルヒットしてしまう。
スカートに目を奪われたことは恥ずかしい。どうせ下に短パンをはいているのだから。
体重の乗った蹴りは威力があり、体がくの字に曲がり、その場でせき込む。
「ごほっごほっ!いい蹴り持ってるじゃねぇか」
つい誉めてしまう自分がいた。
「見事にヒットしたけど大丈夫?」
「あぁ多分大丈夫」
自分でやっておきながら心配してくれる優しさは良いと思うが、だったら始めからやらなきゃいいのに。
「誠が悪いんだよ!からかったりするから」
「でも教えなきゃ学校までそれで行ってたんだぜ?」
「うっ」
彩は目を泳がせあちこちを見た後、くるっと僕に背を向け、
「確かにそうかも。ありがとぅ」
あり、までは聞こえたが、その後は聞き取れなかった。なんと言ったのだろうか?
「こんなところで時間無駄にしないで早くいこ」
彩は話を切り、背を向けたまま僕を急かす。
「はいはい」
僕が彩の横に並ぶまで、彩は歩き方の確認をしていて、小さな体を見ながら手と足を動かしている姿は、なんて言うか可愛らしい。
そして横目で僕が横に並んだことを確認すると、そのまま歩きだした。高い建物の並ぶ大通りを二人でゆっくりと志望校に向けて。


