「辛かったね」

あたしの頭を撫でる麻友。

ねぇ、麻友。

あたし、貴女の優しさに、頼ってもいいかな?

誰かが傍にいてくれないと・・・不安になる。

「彼・・・思い出してくれるといいね」

思いだす・・・か。

それは凄く嬉しいよ。

・・・でも。

隼斗は今、あたしの事をどう思ってるの?

“好きじゃない”

そんな答えだったら・・・凄くへこむ。

別れたくせに、って思うよね。

だけどね、あたしは今でも隼斗を愛してる。

“好きだよ”

その答えだったら凄く嬉しい。

・・・嬉しい、けど。

あたしは柳さんと、いずれ婚約する。

なのに、隼斗と好き同士でいてもいいのかなって・・・。

子供が出来て、家庭を築いて。

好きな人が、自分以外の人とそんな事してるなんて・・・。

嫌、だよね。

・・・だったらさ。

忘れてもらったのは・・・良かったのかなって。

このままあたしの事を思い出さずにいてほしい。

あたしは辛いけど・・・。

隼斗にとっては、その方が幸せだと思うから。

「あたし・・・このままでいいや」

あたしも忘れる努力、しなきゃな・・・。

強がってるだけかもしれない。

でも、強がっていなきゃ無理だよ。

あたしが、あたしでなくなるような気がして―――。

麻友は無言だった。