(side満奈)

それは、ある日突然やって来た。

その日あたしは仕事が休みで、隼斗は仕事。

1人、部屋でのんびりしていた。

――――――♪~♪~

不意に、ケータイが着メロを奏でた。

ディスプレイに光る文字は“桜井双葉”。

お母さんからだった。

まさか・・・この電話が。

あたしの将来を奈落の底へ落とすとは、思いもしなかった―――――。

「もしもし?」
「満奈っ・・・。満奈!」
「ちょっ、どうしたの!?」

電話に出る。

1番に聞こえて来たのは、お母さんの泣いたような声だった。

何があったの?

何で泣いてるの?

嫌な予感がした。

体が硬直する。

あたしは・・・この後に聞く言葉を。

・・・信じられなかった。



「仁菜が危ないのっ!」



これほど取り乱したお母さんの声は、初めて聞いた。

そのせいか、身体が、口が。

上手く動かない・・・。

震える身体。

「あ・・・ぶ、ないって・・・」

絞り出すようにして、やっと出た声。

嘘だよね?

冗談だよね?

まさか・・・。

“お姉ちゃんっ!”

いつかの仁菜の声が、頭の中で鮮やかにリピートされる。



「・・・昏睡状態、なの・・・」



目の前が、真っ暗になった。