- バリル逝去 -
背後の物音に気付いたハイエナはひょいと身をかわし、すごすごとその場を離れました。
しかし、あきらめきれないのか、遠巻きにじっとサイの動きを見つめています。
口の回りが赤く・・・、真っ赤な血がしたたり落ちて・・・。
「たいへん」
私は思わず言葉が洩れました。
そこにいたのは他でもありません。
血に染まり、ぴくりとも動かないバリルだったのです。
お母さんは流れ出す血を懸命に舐めますが、血は止まりません。
ましてや、喉を噛み千切られたバリルが生き返るはずもありません。
「あんまり仲がいいから、いけないんだ」
私はそう言うのが精一杯で、どうすることもできません。
腹いせにそのハイエナをつまみあげ、力まかせに投げつけました。
「くぃーん」
ぐるん、ぐるんと転がりながら、ハイエナは怯えた声をあげました。
それでも気の納まらなかった私は、足を引き摺りながら逃げるハイエナを執拗に追いかけます。
しかし、ハイエナが逃げ込んだ先はお腹を空かせた子供たちの待つすみかだったのです。
私は伸ばしていた手をおもわず引っ込めました。
そして、行き場のないその手を握り締めるしかありませんでした。
第三話 おわり

