出逢いは凄く怖かったはずなのに。





私が…。愛した人はバンパイア。
漆黒と紅い瞳のバンパイア…。
恐ろしくも美しい…。





私の知らない世界が…。





そこにあった。
大切な家族も家も失って…。
孤独だと思ってたけど…。





もう孤独になることはない。だって、この人といっしょにいると自分で決めたから。





世界の広さを知ったから。自由を知ったから。





黒い十字が私を導いて…。





夢との狭間で愛を交わす。
溶け合いながら世界の広さを知ったから。





月日は流れて星が廻る。





紅い星が輝く夜は夜な夜な…。黒い天馬が空を駆け抜けると…。





祭りは黒い十字架に祈りを捧げる…。





小さな教会は今日も平和に礼拝堂では小さなシスターが祈りを捧げている。





彼女が見たのは黒い天馬が走る姿。
追いかけて行くも姿は透けている。
その内音もなく十字架にきえてしまう…。





十字架の祭壇に小さな隠し扉を見つけたシスターは開けてしまう。
鍵が開いている…。






手を伸ばしたが後ろから声が聞こえた。





「何してるの?!」
先輩シスターの金切り声が響く。





「別に…。」






小さな隠し扉を閉めた。





手の内は見せないように走り去る。






悠久の生き物。
それは恐ろしくも美しい生き物。






歯車は再び廻り出す。






聖マリーヌ教会…。






「ダメよ!ソワレ!手の中のものを戻しなさい!」





ちっ…。ばれたか。






「これは祭りの時以外出してはいけないの!」





「ふぅん…。」





またか、聖女様がおっしゃってたでしょ?黒い十字のピアスにふれてはならないと…。





魔物が封印されてるから…。





そんな伝承…。今までに何もないし…。嘘に決まってる。





「聖女様がおっしゃってたでしょ?…。」





「わかりました!聖マリーヌ様はおっしゃった…。私の魂が天へ昇り地へ帰った時、再び汝に逢いに行かん、黒い十字架に血を封印する。主の名の元に…。」





先輩シスターがごほんと咳払いする。





「よろしい…。」






祭壇奥の小さな扉にそれを戻した。






黒い天馬がまた走り去る。
私以外見えない。
誰も信じない。