鏡…。それは汝を写し出すもの。外側…。時には内側までも。






鏡…。それは時に何処かと繋がっている「扉」の断片。





だから、闇が深い夜は気をつけて。





吸い込まれてしまうから…。





頭の中で声が聞こえた。
鏡?






そして、蹄の音に羽ばたき…。風の音。






大きな嘶きに目が覚める。





体を起こすとリュビの背中に抱きついていた。






目の前に三色の炎に包まれる美しくも恐ろしい…。
愛しいバンパイアがいた。





炎は混じり合いながら黒くなりながら…。体の中に収まっていく。





黒い渦が消え…。漆黒と紅い瞳のバンパイアが立っていた。





「ノア!」






木々が揺れていた。






セピアの世界がモノクロの背中に変わる。





豪華な枠の鏡が割れる…。
その中に飛び込んでいく。





「リュビ?!待って!ノアが…。待って!」






閉じられるように鏡が割れる。





「いやぁ!待って!」






鏡の破片は渦を巻いて空間を歪んでいき、闇の生き物と少女をかき混ぜていく。





意識は苦しさに飛んでいく。
必死にただ背中に抱きついているしか出来ない。





あぁ…。






もうダメ…。






鏡が割れる音が響き渡る。





白い部屋には空間の歪みが出ている。






出口は入口。入口は出口。
歪みが歪みをよんでいた。





耳元がズキンズキンと痛い…。






「痛い…。」






確実に覚醒させられ痛みに眉を寄せる。






抱えられていた。
耳に吸い付かれているのに気づいて赤くなる。






「美味い…。」






不敵に笑う漆黒と紅い瞳のバンパイア。






骨皮の生き物に乗りながら歪みに飛び込んだ。






気持ちが悪い。今何が起こってるの?






白い教会の塔から青の炎に包まれた骨皮の生き物が飛び出す。





教会の鐘が音を立てて落下し、動く遺体達を下敷きにしながら転がって行く。





炎に包まれた遺体が消えていく。
灰になり空へと舞っていく。