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私は…。どうしたんだっけ?





さっきのはローズの記憶?
何もない。回りは暗い。ただあるのは鏡の破片がいくつも浮いたり、通り過ぎたりしている。





「ここは何処?」






「夢との狭間。」






何処かで聞いたセリフに振り返る。






「ノア?」






「もうすぐやって来る。」





凛とした声が聞こえた。
回りの空間が白く何もない世界に変わる。






「ローズ?」






にっこりと優しく微笑む天使。
「えぇ。そうよ…。ローズマリー。」






「貴女はここに来ては行けなかった…。」






「えっ?」






ここは何処かもわからない。





悲しげに瞳が揺れる。
「ノアが来る。破滅の炎を纏って…。ここにある…に気づいたらきっと、止められない…。」






抱きしめる天使は言った。
「でも、貴女なら止められるかもしれない。」






抱きしめる天使の後ろに白い箱があった。






「あれは何?」






見上げると、長い睫毛が見え青く光る瞳が見えた。





「あれは…。あってはならないもの。」






「あってはならないもの?」






「歪めたものよ…。あってはならない。貴女は来ては行けなかった…。」





「ノアが…。貴女の香りに誘われ…。きっと追ってくる。ここまで…。」





悲しげに瞳が揺れる。
「炎獄になるかもしれない…。怒りに満ちた獣が見える。」






「ノアが…。」






「無垢な魂…。きっと私が守るから。だから…。お願い。私の…。闇色の獣を助けて。」






額に触れ…。
白い部屋が揺れる。無機質な白い箱が異常に思えた。






「ローズマリー…。これから貴女は見ないといけない。戻る為に…。きっと。」






「ローズ?」






「私は…。ブルーローズ。もうここには居てはいけないもの…。」






手を握りしめ、抱きしめられた。





「ブルーローズ?私は…。」






「ローズマリー…。貴女にしか出来ない。ノアを止めて…。怒りに囚われないように。出ないと…。」





死者とバンパイアの二つの力…。






額にキスをし、耳元に触れた。





「聖なる十字に…。」





黒い二つの輝きに…。
黒い獣に安らぎを。