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「ローズ遊ぼうよ。」
小さな少年は言った。





「わかったから走らない。教会の廊下は静かにね。」





「わかったから早く早く!」
手を引っ張る少年は楽しんでいる。
笑う優しげなローズと呼ばれたシスターの回りにはいつも誰かがいた…。





白い肌に薄紅色の頬…。白いシスター服が似合っていた…。





教会の中庭には鳩が飛んでいる。
子どもがきゃっきゃっと無邪気に水遊びをしていた。





子ども達はローズと親しく呼びかけ駆け寄る。
走りながら遊んでいる。




立ち止まる。
教会の入り口に立って微笑む。
「私は…ここから出られないの。神様から許しがないと。」





気がついた少年は
「ごめんねローズ…。」





頭に手をあて
「あなたが謝ることじゃないわ。それが私の役目だから…。ここを護るのが私よ。」






はにかむ少年少女…。





「さぁ行って。また来てね。」
にっこり微笑む天使。






「またねローズ!」






「お母さんによろしくね。薬がいるときはまたいらしてと。」






「「わかった!」」






パタパタと去っていく。




見送る彼女は何処か寂しげに見えた。






重い扉を開け白い教会に響き渡る靴音。
天井から光が降り注ぎキラキラと光の帯が降りていた。
天使が降りてくるようないくつもの帯に見とれた。





大きなステンドグラスもまた色とりどりに太陽の光に輝いていた。






秘密の通路を通り過ぎ、地下に降りていく。






秘密の香りに秘密の床模様。
光もない何もない部屋。
白い部屋。魔女の部屋。





守人の部屋。






「まるで牢獄…。」
誰もいない部屋でつい口に出してしまう。






悪者が入れないように結界を張るのが役目。
結界の中心であり軸であるため外に出られない。




「主よ、許しが出るのなら私の願い聞き届けたまえ…。」






その願いは叶えられ…。歯車が動き出す。
白の魔女と闇の獣が出会った。





白の魔女は戦いを止めるべく歯車を回し…。






闇の獣は孤独に挑み混じり合う。





それは紡がれし記憶。
血は濃く。甘く…。
体に刻まれる。
存在それは…。歴史の断片…。