金髪の少年はにっこりと微笑んだ。
「負けず嫌いなんだ。」





「ほぉ…。俺と似てるな。」
負けずに微笑んだ。






風と雷がぶつかる。
まるで天使と悪魔が舞っているかのように。





真珠のような濁った瞳。
双眼の宝石が輝く。






どちらも譲らない。






*******





境界線が綻び王は膝を付いた。
「逃げたか…。」
魔力の消耗が激しい。
他に何が…。






激しい力を感じた。
「まさか…。」






暗がりの中に見えた。
理性を無くした忌むべき存在…。
だが今の自分では抑えきれない。






鏡を振り返る。
「血の封印が…。」
アイスブルーの瞳が閉じられた。






三つの白いフードは家に向かう。
我が家と呼ぶ、魔物が入ることの出来ない聖域。
「白い家」または「白の大聖堂」「中央教会」と呼ばれる。






境界線を越えた瞬間に目覚めたそれは…。家を目指す。







鏡は見ていた。
セピアの世界にいる漆黒の瞳。





磔の瞳が紅い紅い吼え声を上げた。
怒りに染まる瞳が見えた。





かつての記憶が蘇る。






「裏切ったのかローズ。」





「違う!信じて!お願いよノア…。」





「やはり教会のものだな…。白の魔女(ジョーカー)。」





炎が燃え盛る。





「ノア!」






悲しいげな瞳が見えた。
瞳に映るのは赤色。
全てが赤色に染まる。






どれくらい欲しかったのか。何を欲したのか。
バンパイアと亡者の力はそこを死に導く他は何もない。





静寂に無こそが正常。
俺にはそれしかない。
俺の存在自体がそうであるからだ。






彼女は俺に存在を教えた。
俺は変わった…。
求めたのは青く艶のある一輪の薔薇…。






俺だけの華…。






また失うのは嫌だ。
失うくらいなら…。
全て焼き付くし灰にしてしまおう。





「全てを灰に帰る。」





赤色の涙は燃え上がり、戒めた蕀は消えた…。





顔を上げた瞳は真紅。
両腕は骨。手には赤色の炎。





闇の獣は目覚めた。





この世を全て焼き付くす為に…。