まるでダンスを踊るかのようにしなやかに風を操る。
さながら舞う姿は天女のようだった。





美しさに反して風は生き物を捕らえるかのように流れ、息も出来ない。





窒息するか生き血を搾られるか…。風は水分を吸い上げ乾燥させる。
炎は風を吸い込み膨張していく。
そこは砂漠のように灼熱へと変わる。





獅子が正面から風を切り込んだ。





満身創痍の捨て身の技は風の防壁を破った。
血が吸い上げられる。





「愚かな…。」





天から直角に急降下する長い髪の毛がキラキラ光を放つ。





レイピアが風の中心を狙い頭上に。
さらに銀の弾丸が雨のように降り注ぐ。






風が止んだ。







砂ぼこりが消えていく。





獅子が横たわり、首を捕まれているユニコーン…。渦巻く風は犬を捕らえていた…。





「呼吸と心臓の音に死の風はついて行く…。」





ユニコーンの首に牙を立てた。





「あお!」





「快楽の代わりに死ぬか…。線を越えすぎたばつだね。」






「闇の…。存在が…。」





「静かに行きなよ。シスター?」






背中に痛みが走る。
「!」




どさりとユニコーンの力が抜ける。






聖剣が肩に刺さっていた。





「しぶといのはお互い様か?赤髪?」





「相棒にふれ…るな…。」





風が獅子を斬りつけ血が無くなる。
青くなった獅子に被さった銀の長い髪。





見開かれた瞳に映る銀の髪はゆっくりと言った。
「しょうがない人ですね…。」





「リコルヌ!!」





両手で赤い髪を包み、額に口づけ…。静かに瞼が降りた。






獅子の体に倒れ込む。
叫ぶ声は何処かに吸い込まれていく。






風は止まない。
銀のユニコーンを風から庇うように赤い獅子が盾となる。






そのまま二つの白い影が横たわる。






歪む境界線が裂ける。
「ヴィダー!」





「行くよ。」





雷が落ちる。
超音波が風を切り込んだ。





「鷲と共に行きなよ。フクロウ?」





「行くぞイブ…。」






「シアン…。フクロウとジョーカーをここは僕に。」





息も絶え絶えの犬が頷き裂け目に消えた。





濁った瞳に向かう。





風見鶏は「やっぱし来たな。」