血の海さえもそこにはなく、ただ土が見えていた。





風に乗って上空から唖然と下を見下ろしていた。




「なんてこと…。」
グラスはただ風見鶏に抱かれて何もなくなって境界線に言葉が出なかった。
彼を見上げると表情はなかった。






「終わったのですか?…。」





風の音だけが聞こえている。





「いや…。まだだ。」






白く輝く空間が現れた。
徹底の防壁。





「やってくれる…。」






セブンハウンドがゆらりとそこに存在していた。





「グラス…。」





一段と低い声が聞こえた。
察した執事は答えた。






「なんですか?ジルウェット…。」






「戻って頂けまいか?王の元へ…。」





「ふふ…。わかりました…。似合いませんよ。貴方には…。」





額にキスが降りてくる。




「おやつは前払い…。てかグラス…。」





首に双剣が当たっていた。





「油断のない方ですね。私は…王の執事です。」




「はいはい。」





そのまま見つめた。
「御武運を…。風のアサシン…。」





霧のように消えていく。





翡翠の瞳が風を纏いながら地面に降り立った。






「化物はこれだから嫌になるぜ。」





「しぶといのが闇の生き物です。」





「聖剣よ我に力を!」





「さっさと終わらせるべきですわね。」





「先に戻る。行くぞイブ…。」





翡翠の瞳が白く濁った瞳に変わる。
「虫けらよ。悪いが俺から逃げられた奴は…。いない。」





風を纏い耳飾りが光を放つ。





遠くの片割…。所有物の耳飾りが光を放つ。





「!…。」
美しく少年は体に風を纏う。風に身を任せる。血が吸い上げられていくのを感じた。
所有物…。それは主人の糧となる。
力を見せよう…。
それは少年にとって誇りであった。





「旦那様…。」





耳飾りから力が流れ込む。




風は今までと流れを変えた。





「「「!!」」」






ニタリと笑う目の前のバンパイアに背筋に冷たいものを感じた。





耳から首にかけ手を添える化物はうっとりと嬉しそうにしている。




白く濁った瞳をこちらに向けた。
「さぁ、ショーの始まりだ。」