また夢との狭間にいる…。






広がるのはモノクロの世界。広がる波紋。
一本の葉のない木。






アイボリーのモノクロにセピアのモノクロ。






私は…。うずくまりひとりぼっち。






「何故泣いている…。」





顔を上げれば、木の上から顔の整ったバンパイアがいる。






「寂しい…。胸が苦しいくらいの…。なんてあなたにはわからないかも知れないけど。」






落ちてくるバンパイア…。広がる波紋。






「ノアと呼べ。ブルーローズ。」
そう言って長い指で顔をクイッと持ち上げた。





「私は…。マリーよ。あなたがマリーと呼ぶなら…。呼ぶわ。」






「マリー…。」






何処か遠くを見つめてた。





「魂は同じか…。」






「えっ?今なんて…。」





「そろそろ、戻れ。奴等が来るぞ。」






訳がわからない。


******



床に寝ていた。教会の焦げた床に。
体は煤だらけ。屋根もない瓦礫の教会。
涙は止まらなかった。






「どうしてこんなことに。」






長い髪が揺れた。






耳元に聞こえる甘い声。
「起きて立て。」






言われるままに立ち上がる。





「走れ!」






私は…。人形のように声の導くまま走り出す。
あてもなく…。






「必要なら呼べばいい…。どうせ奴等は私をまた枷をはめ檻にいれたいだけだ…。」






笑い声…。が聞こえた。





「契約者…。マリー。私はお前の物だ。そしてお前もこの私の物。」






頭に響く。






「奴等は追ってくる…。時間の問題だ。」






「誰に追われるというの!」
たまらず声に出した。






「中央教会…。赤い薔薇、白い十字の犬ども。」