向かい合う漆黒の瞳。






「早く解き放て…。」
紅い瞳は笑う。





「必要ない。」
漆黒の瞳は拒絶した。





「裏切られるに決まっている。」





「俺は、違う…。あれは…。」





突然、視界が揺らいだ。
「ノア!」




白い犬が見える。
「こんな時に面倒な…。」
炎で跳ね返した。





奇妙な音が響き渡る。
次第に炎が聖なる鎖に覆われる。





「くっ!」





薔薇は聖なる鎖に包まれた。
「ノア!」
金髪の美少年はそれを確認すると去っていく。





*******





「あれ?」
セピアの世界にいた…。




体が浮いているような感覚。
自分を庇って、抱きしめられていた感覚が残っていた。





必死に手足を動かすも空を切るだけ。





青い炎が灯り消え…。波紋が広がっていく…。
見えた先には葉のない十字の木…。





瞳に映るその姿に叫んだ。
「いやぁ!ノアー!」






力なく張り付けにされている愛しいバンパイア…。





目からは血の涙が流れていた。





「嘘だって言ってよ!神様…。あぁどうか…。」傍に行けない…。




何よりも怖い失う恐怖に叫び出す。





「独りにしないで!!」





うっすら目が開く…。あの紅の瞳に漆黒の瞳。






「五月蝿い…。」






「ノア!」





「少しそこにいろ…。」優しく微笑んでいた。
耳元からドクンドクンと鼓動が聞こえる。





「ノア?」





何かが可笑しい…。





弱々しく微笑んでいたバンパイアは苦悩の顔に歪んでいた。





次第に距離が遠くなる。
青い波紋が激しさを増していく。





ローズマリーの体が青い炎に包まれるも何かが弾ける。
「あっ…。」





体から無垢な魂が離脱する。
神に願いが届いたのか…。
愛しいバンパイアに近寄る。





言わなくてはいけない。




「泣かないで…。」
そっと血の涙をふく。





「弱音ばかり言ってごめんなさい。私はあの時貴方を信じると決めたのに…。ノア…愛してる。心だけはどうか…。貴方の元に。」





小さな十字架を握りしめ消え行く魂が…。





バンパイアは手を伸ばす。魂は同じかと…。同じような言葉を聞いた。
白い無垢な体が触れて消えた…。