「…。」






「じゃあ…。湖の回りだけ?ダメ?」






諦めて座るとため息が聞こえた。





カタンとバルコニーの扉が開いている。





いつの間にかリュビが待っていた。





横乗りで乗るといつもよりゆっくりと飛び出した。
それは優雅で、人魚が湖に帰っていくように見るくらいなめらかなだった。





紅い瞳は見ていた。
枷は自分だけでよかった。ただ少女には枷はいらない。
ただ失いたくない…。






「ローズ…マリー。」






残り香の余韻に微睡んでいく。





もう決して放さない。





鏡は見ていた。
どんなに抗っても内なる紅蓮の炎は消えないと…。獣は眠る。
それでも…。






湖は波紋もなく、ただそこにある。
今日は風もなく、生暖かい空気が漂っているだけ。





「リュビ…。」





寂しさを紛らわすようにリュビの背中を撫でる。
「私変なの…。夢も見るくらい。」





答えることはないがリュビはあるようなないような耳らしき骨皮を動かしていた…。





水平にずっとゆっくり飛んでいく。
城が見えた。





「グラスに会いに…。ダメかな。」





湖畔に降り立ち城を見上げる。
そこに半透明の…。






「これ…。生き物?」





目だけくりくりと動いている。小さな羽?もある。
蛇?ではないらしい。
ふよふよ漂いながら通り過ぎる。
蛇に羽、なんとも言えない。羽は動いていないし…。




リュビはいたって普通に翼で払っていた。





髪の横をすっと通り過ぎる。




「ここの生き物て危ないのは見た目だけ?」





へなへなと座りリュビといつの間にか寝てしまった。





急にリュビは頭を上げる。
何か気配を感じた。
しかし、辺りは静かで何もない。





頭のよいこの生き物は名をくれた主人を起こす。





「リュビ?どうしたの?」





城に取り巻くきな臭いオーラを感じ取る。





直ぐに主人を乗せた。
飛び出そうとするも主が落下する。




首に何か衝撃を受ける。
「きゃっ!」





かろうじてリュビは主をキャッチした。
「あっ…。」





半透明な蛇がバラバラになっていた…。
何か呪いが追っている。リュビは全速力で湖を飛ぶ。