朽ちた屋敷にその日は珍しくうっすら灯りがあった。
町外れの畑にポツンとある洋館は…。
誰も近づかない。





畑ではうごめく奇妙な野菜の蔦がのたうち回って気味悪い…。





乾いた洋館の窓に人影が過る。小さな蝋燭が通り過ぎ…。





いかにも古い音をたてながら扉が勝手に開く。






中には似つかわしくない少女が散らばった包帯の上に横になっている。





目が空いた少女は明らかに戸惑いと恐怖の顔をしていた。





包帯を器用に使い引き寄せる。





「お前は…。人間か?」




マリーは答えられなかった。





答えれば…。どうなるか…。





全身包帯にギョロと動く片目に後退るも逃げ場はない。





包帯がほどけていく…。
声は出ない。
片目は無く空洞化していて、もう片方はみずみずしくキョロキョロ動く。
全身は乾いているようで何か皮膚は光沢もあり、まるで…。





半生のミイラ…。





壷から何か取り出し塗っていた…。





必死に逃げ道を探すもどう考えても扉一つだけだった。





天窓が上にあるが届きそうもない。
朽ちた磔が何個か見える。




壷の香りは…。あのオレンジ色の濃い果酒の匂いがした。





包帯が勝手に巻き始めた。
今なら…。






扉に走り出す。





その途端に足元に沢山敷き詰められていた包帯がマリーを捕まえた。





「んー?!んー!」





引き寄せられて動けない。口元まで巻き付いてきた。





片目がまたマリーに聞いた。





「お前は人間か?」





答えられなかった。





片目が近づき目を瞑る。




何か口に触れていた。





驚いた瞳が片目を見つめた。





片目がキョロキョロ動く。





昔人として生きた頃…。嗅いだことのある香り…。





「お前は人間か?」





自分自身に問うように片目の包帯男は少女に聞いた。