「くっ…。」
落下し痛みが走る。
今まで痛みをここで感じたことはなかったのに…。





走り出すも黒い何かに足を取られる。





あの木は見えない。





体の自由が奪われて行く。




「ノア!」






*******





「見つけた…。」





「虫けらが何故ここにいる?」
梟が振り返るとバンパイアが立っていた。





気配はしなかったが殺気は感じていた。





「お前は…。封印されし獣か?」





漆黒の瞳が赤くなり燃えるルビーのように輝いていた。





黒いフードが発火する。梟は地面を転がりながら火を消す。





白い衣が暴かれ、白十字架に赤い薔薇のエンブレムが現れる。





「イブ!」
白い犬が吠え、銀の弾丸が連写された。





炎と風が弾丸を弾き飛ばし、炎が渦巻きながら襲っていく。





「シアン!下がりなさい!」





全身凶器と呼ばれた梟から見えない鎖が放たれる。





「!」





漆黒のバンパイアは見えない鎖に囚われる。





「獣を捕獲しましたわ…。」




聖なる銀鎖が自由を奪う。
漆黒から赤い瞳が再び輝く。





「何しに来た。犬よ…。」





不敵に笑う呪われしバンパイアに告げる。





「再び封印を…。裏切り者には死を…。また繰り返さない悲劇の為に。」




クックッと乾いた笑い声。
「悲劇?裏切りだと?お前ら狂信者の為にローズは…。」
炎が吹き上がる。






「消し炭とかせ…。」
炎が渦巻き辺りは火の海になる。





二つの白い光から弾丸が放たれる。真っ直ぐに心臓を狙って…。





轟音が燃え上がる炎にかき消える。





「ノア!」





声が聞こえた…。





煙がはれた瞬間…。白い犬は舌打ちした。





「化物が…。」





骸骨は優雅に踊るように炎を操る。
竜のように踊る炎は白い犬を追い詰めた。





「!」





業火が最後に覆う瞬間…。
梟が聖なる鎖を解き放つ…。




守りの翼が広がっていた。
「イブ…。」






犬と梟は寸での所で消え去る…。





辺り一体が灰になった…。





ひとつの影がゆらりと動くのみ。
聖女の血を欲するが故に…。愛するあまりに孤独な獣は…。





「ローズ…。俺は…。」