私の名前はグラス…。
長きに渡り王族に仕えるビジュー家の末裔。
普段は執事を勤め…。影では暗部に所属している。





中庭にいる人間を監視している。
ジョーカーと呼ばれる人間…。
王の所有物。






一人でいることの危険さを知らないのか知っているのか…。





魔物が城に入ることは滅多にありはしない。
結界に入る不届きな輩が出てきては消される。






彼女は噴水に最近いることが多い。
結界が薄いところにわざわざ来ている。
そこは外から近い。






入り込んだ気配に彼女の知られないように消していく。





この香りは…。
惹き付ける。






「猫さん…。貴方も一人なの?」






「…。」
膝に飛び乗る紫の猫。
あれは魔物…。






仕止めそこなった?






結界が揺らいでいる。
何故…。






ただならぬ気配が二つ…。
外と内に…。






冷気を放つアイスブルーの瞳が見えた。






息を飲みながら見てしまった。
双剣を何時でも使えるように構えながら…。その美しさに。





アイスブルーの瞳がジョーカーを見つめる。






あぁ…。あの方は…。我が主は…。






それは…。叶わぬ願い。





結界が激しく揺らいだ。
猫は逃げ出した…。





跡を追いながら結界の外に出た。






「!!」






轟音と熱風が結界を出た途端に襲いかかる。






防御の構えを取りながら目の前を見据える。






数人のバンパイアと魔物…。
頭を持ち上げられ炭と化しているバンパイア。






持ち上ているのは遺骸の姿…。





「ノア様…。」






紅い瞳が此方を見つめた。





その威圧感に体が重い。





「…。」






嫌な汗が背中を流れる。





この方は…。






炎と共に消えていく。






威圧感から解放され、死体を確認する。
紫の魔物がいない…。