「ジルウエット·ラファール!」






翡翠の瞳が見えた。






「グラス·ビジュー…。楽しかったよ。次に逢うときは敵かもしれないな…。」






風が舞っている。






最後に聴こえるのは…。風の音。
「縛られるのは嫌いでね…。君といると楽だった…。きっと…。」






その声は風の音に消される。






気まぐれな風見鶏は消えた。






翡翠の瞳のアサシン…。その消息は誰も知らない。








******


少女のように美しい少年が黙って立っていた…。





「風は気まぐれ。その内戻りますよ…。縛られるのは嫌いみたいですから。」






「旦那様…。」






美しいバンパイアは少年を抱きしめる…。






頭を撫でながら髪をすくう。






「これが有る限り、貴方は逃げられない。貴方は風見鶏の物…。」






片耳についた耳飾り。
付いたビックジュエルは翡翠の瞳を思わせる装飾の耳飾り。
真の姿は風の宝剣…。






二つで一つの物…。
剣と鞘は故に…。共鳴する。







「そう…。あの方は風そのもの。時に激しく。時に懐柔してしまう。」






「旦那様は…。優しい方です…。」






はぁ…。とため息をつく美しい執事。






「軽いのか重いのかわからないですが。」






「?」






「何でもありません。よかったらお茶でも…。」





「僕が入れてきます!とっておきの美味しいのを…。旦那様には内緒です!」






輝くような笑顔で飛び出すようにキッチンへ走り去る。






「彼奴には勿体無い餌ですね…。」






珍しく独り言を言った美しい執事は苦笑しながら少年を追って行く。






店はキラキラと煌めいていた。