血が乾燥して行く。






「馬鹿な?!」






「誰の命かなんてどうでもいい…。それを汚すな虫けら…。」






白濁した瞳が男爵を睨み付ける。
強張ったようにその瞳に動けない。





ゆっくりと風を纏いながら近づき…。
「王位なんて今更どうでもいい。縛られるのは嫌いでね。適任者がいるだろう。継承は彼奴で決まりだ。」






首が落ちかけたバンパイアは後退りする。






ニヤリッと笑う暗殺者の瞳…。






「散れ…。」
剣が降り下ろされる。
強力な疾風に首が飛び…。
更に細切れから血が乾燥し、砂のように散って行った。






辺りは静まり帰る…。
あれだけいたバンパイアの暗部がいない…。それを冷めた瞳が…。






「せっかく眠らせてあげたのに…。駄目じゃないか…。」






翡翠の瞳が細められる。





抱き上げられたまま…。クルクルと踊り出す。
月が光っていた。






自然と風のペースに乗せられて…。草原で踊るように飛ぶ…。





冷気と風が混じり合う。
スターダストが出来上がり月の下で煌めく宝石のような景色だった。






「どっちの貴方が本物?」
そう呟いた。






クルクルとパーマの髪が揺れている。
翡翠の瞳が見えた。






「どちらも…。私は気まぐれな風見鶏。王家に属さない。」






そして…。一段と低い声で冷めた瞳が…。






「そして…。獲るものの為なら手段を選ばない。」






「…。」






「例えそれが王家だとしても…。」






殺すよ…。






暗殺者の瞳を宿していた。
狙った獲物は逃がさない。
冷めた瞳…。
意志の強い瞳…。






グラスは笑顔で言った。
「では、やはり私と貴方は相容れない。私は…。王家を守る者…。」






ふっと瞳が…。






額にキスが降りていた。





不適な笑顔で言った。
「助けた報酬確かに頂いた。」







草原には二人だけ…。






「じゃあな…。氷双のグラス…。」






「監視役にさよならを言うの?」






クスっ…。
「それもそうだな…。また逢おう。グラス。」