そのピアスには触れてはいけない。



魔物が封じられている。



祭の時以外にしてはならない。




亡者が甦る。




その魔物は亡者の王。



血を好むバンパイアと亡者の力を持っている。




遺骸を動かす者。



聖女が黒い十字に封印した。両耳に…。




片方にバンパイアの力を…。





片方に亡者の力を…。




黒い輝きにそれぞれ封印した。






だが教会に泥棒が入る。
教会荒らし。神を冒涜するもの。




知らぬは恐ろしい。片方では存在できぬそれを盗みだし…。亡者と成り果てる。





古の血を受け継ぐ聖女はいずれにあるか…。何の因果がピアスと聖女は引き合い。出会った。






泥棒は見回りしていたシスターに鉢合わせ。




亡者と成り果てた姿になりシスターを襲う。

燭台は転がり火の手があがる。




「いやぁぁ!ジーナ!」





亡者に叫ぶ小柄なシスターはそばにあった長い柄の十字架を思いっきり殴り付けた。






「ローズマリー…。」






洗礼名で呼ぶ親友…。






火が広がり燃え盛る。






「早く…。あのピアスを戻して。」






「しゃべらないで、ジーナ!」
泣きじゃくりながら首を押さえる。赤い雫は止まらない。






祭壇に戻さなければ、あの呪われしピアスを…。





亡者が動く…。振り返ると小さなシスターに覆う。





咄嗟にピアスを奪い…。カランと片方が音をたて血溜まりに落ちる。






ピアスはみるみる血を吸い上げた。人の形を形成したそれはゆらりと動く…。







長く長身のそれは亡者を見る。
「消えろ。」