「何度も言いますが、私からすれば結婚してからの社長は何もかも信じれませんからね。昔の社長は女関係は派手で泣こうが喚こうが顔色一つ変えずで、常に女関係で刺されるかと思いヒヤヒヤしていました」

「……」

「そんな社長が今では…。一回り以上年下の奥様に対し慌てふためくようになったとは驚きです」





それは少し大袈裟じゃないか?


でも…、串田の背を見ながら俺は言う。





「こんな俺も良いだろ?」





そう言い残すとバーから出るべく歩き出した。


――外に出れば見覚えのある男が一人。


その男がいつもの運転手と気付いた時には、バーに残してきた串田のニヤリと笑う姿が頭に浮かんできた。


あぁ、やられたな…


また俺は串田にやられたみたいだ――…