「言う必要がないだろ」

「え…」

「それだけだ」





言う必要がないなんて、そんな言葉は聞きたくなかった。





「それだけか?」

「は、い」





他に聞きたかった事があった。


元カノさんとの結婚の事を誰が知ってるかなんて事よりも聞かなければいけないのに、もうないと返事してしまった。





「この容器は返すから」

「分かりました」

「俺が仕事終わりに届ける。だから食べたら洗い乾かし置いといてくれ」





お茶を飲み干した拓斗さんは立ち上がり出ていく。





―――バタンッ―





扉の向こうから微かに拓斗さんの部屋の扉が閉まったであろう、そんな音を聞いた途端に溜め息を一気に吐き出す。