こんな森の手前で、樹海を眺めて居ても仕方がない。
森の奥へ行こうと足を踏み入れると、早速異変を感じる。
何者かの気配――
それは強い憎悪と殺意に満ちたオーラであった。
【うぅ……苦しい……苦しいよぉ……】
どこからともなく聞こえる声……
どうやら森の霊が、立ち入れさせぬと脅かしにかかっているようだ。
「苦しいよぉ!!」
その言葉はハッキリ木霊し、目の前の藪から血まみれの霊が勢い良く飛び出した!
出てきた場所は、偶然にも礼子の前。
彼女はそれをものともせず、口が裂けるのではないかと思うくらいに口角を上げ、鋭い牙を化け物じみた顔と共に剥き出した。
「ガルルル! アウ!!!」
「ヒィ!! 口裂け女だぁ!!!!」
それを見た脅かす側の霊は逆にビビり、慌てて一目散に逃げてしまった。
不運な事に、礼子の前に現れた彼がいけなかったのである。
「霊力が失っている状態でも威嚇だけで戦力を失わせるなんて……礼子君。君はもうどこでも生きていけるよ」
「何言ってんのよオッサン。最近の霊が軟弱過ぎるのよ。サキのとこの学校霊といい、みんな草食霊ね」
草食系男子の如く、なよなよした霊の集い。
どこに行っても、礼子からしたらその軟弱さは変わらないようだ。
仮にここが日本有数の心霊スポットだとしてもである



