着いた先は礼子が居る部屋。
この食いしん坊の嗅覚で、焼けた香ばしい何かの匂いを嗅ぎ付け、やってきたのである。
普段からいいものを食ってないか、それとも単に食い意地が張っているだけか、ヨダレ垂らしまくりで部屋を覗いて見る。
そこには、礼子が味ぽんを手にかざし、勢い良く振りかけている背中が見えた。
先程のエドワードもそうだが、動物は霊力が強いため姿が見えているようだ。
「ま~~たっく、どいつもこいつも焼き肉に塩コショウばっかで嫌になるわ。アタシのポン酢調味料がそんなに気に食わないってか」
逃げた男の理由を勝手にそう決めつけ、これでもかと言うくらいポン酢をかけている。
ってか逃げた理由とは別に一応ツッコむが、焼き肉にポン酢は無いだろ。とオッサンの声が聞こえてきそうだ。
そう言えば、彼は担当者のクセに一体どこで道草を食っているのか?
せっかく美味しい物が食えるのにと、1人だけ楽しむ気満々で礼子は箸に手を伸ばした。
「お。この香ばしい香りが最高ね! さて、いただき……ん?」
後ろを振り向くと、開いた部屋のドアにラッシーがこちらを見ながら立ち尽くしている。
それをガン見する礼子。
互いに見つめ合う。
ジー。
《ハッハッハッハッ》
ジー。
《ハッハッハッハッ》
ジー。
《ハッハッハッハッ》
……



